FXコラム

発言だけでも相場にリスクを呼ぶ日銀黒田総裁の微妙な存在

2日の米国の雇用統計を受けて相場は9月利上げの可能性を残しながら株価は利上げ後退感のほうをとって上昇し、為替はドル円中心に利上げを意識し、投機筋の思惑買いも手伝って104円台まで上昇する動きとなりました。

週明けもこうした上昇の動きが継続するものと思われましたが、5日の東京タイムは伸び悩み、さらにそれに追い討ちをかけるように日銀黒田総裁が都内で講演したことがメディアに流れることによってドル円は下落することとなりました。

講演の内容としては、20日からの金融政策決定会合で行う金融緩和の総括的な検証について、緩和の縮小という方向の議論ではないと述べ、2%の物価上昇目標の実現へ向けた検証だと強調し、今後も緩和に強気の発言を見せました。さらに、量・質・金利の各次元で拡大は十分可能で、それ以外のアイデアも議論の俎上からはずすべきではないとも語り、追加の金融緩和に踏み込む可能性も示唆示唆したのです。

ところがこの報道を受けた市場はドル円で円買いの動きを強めることとなり、その内容と照合してみても相場の動きは結構不可解なものとなっています。

ブルームバーグの報道では黒田総裁が具体的な緩和措置に対しての言及に踏み込まなかったことが嫌気されたとされていますが、一般的な講演でそのような踏み込んだ発言をするとは到底思えず、緩和措置を示唆しているにもかかわらずドル円が売られるという事実がより気になるところです。

■市場は黒田発言と日銀の政策に疑心暗鬼?

ひとつ考えられるのは市場が黒田総裁の言動に非常に不信感をもっているということです。

これまで黒田日銀の政策はとにかく意表をつくサプライズ主義をとってきており、市場との対話は二の次になってきましたから、マイナス金利は行わないと国会の場で明言しても平気でその数日後には政策決定会合でマイナス金利の実施に踏み切るなど、どこまで何を信用していい存在なのかの評価がかなり下がり始めていることを感じさせられます。

そもそもマイナス金利は金融庁からさえも深堀に待ったをかけられている状況ですが8月のジャクソンホールの講演でもまだまだマイナス金利深堀の余地ありといった姿勢を覗かせるなど、次回の日銀政策決定会合に対する相場の不安感が高まっていることが、5日の黒田講演にあわせた相場の下落につながっている印象をぬぐえない状況です。

■自画自賛の緩和検証も評判を落とす可能性大

7月の日銀政策決定会合ではこれまでの黒田緩和を検証する旨の発表が珍しく事前段階で告知されることとなり、一体どのような内容がでてくるのか関心が高まっていますが、単にこれまでの緩和を自画自賛し、これかれも継続する旨だけのひとりよがりな内容に終始し、しかも21日についてはなんら緩和は行わないというおまけ付きの内容を発表した場合、市場ではかなりの失望売りを買うことだけは間違いなく、4月末の日銀政策決定会合時のような大きな売り浴びせに相場が直面するリスクについても真剣に検討しておく必要がありそうです。

イベントドリブンファンドはむしろこうした動きで21日まで相場を買上げて当日に売り浴びせをかける、いわゆる日銀プレーを画策している可能性も高く、5日の内容程度の黒田総裁の講演だけでも売られる
ドル円を見ていますと、かなり危険が状況にさしかかってきていることが感じられます。黒田総裁が自身で感じている以上に市場は日銀との親和性を欠くようになっており、日銀が想定した動きとまったく逆の反応を示す可能性が高まってきているのではないでしょうか。

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